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【漫画家・えびはら武司先生インタビュー】一人の意見が強い時代。表現の自由はどうやって守られるのか?

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まいっちんぐマチコ先生の原作者として人気の漫画家、えびはら武司先生へインタビューさせていただきました。

「少数派の意見が強くなったよね」

漫画家、えびはら武司先生はそう言いました。

代表作『まいっちんぐマチコ先生』などで知られるえびはら先生は、「藤子不二雄の一番弟子」としても知られています。

えびはら武司先生の横顔

昨今、漫画の世界だけに関わらず、アニメやバラエティを含むテレビ番組、コマーシャル、映画などのクリエイティブの場において、表現の自由が奪われつつあるように思います。

たった一人のクレームがきっかけとなり、作品の公開が止められるものも少なくない時代。SNSの普及による影響も大きいのでしょうか。Twitterなどで少しでも否定的な意見があれば、それに乗っかるように容赦ない批判が寄せられ、世に出た作品が人知れず、社会的に封殺される。そんな風潮が目立つようになりました。

本来、言論や出版における「表現の自由」は法律的にも認められいるはずなのですが… 世の中に出る作品たちは今後、どうやって守られていくのでしょうか?

日本の漫画界における見識豊富なオーソリティーとして、非常に貴重な意見を持つえびはら先生に「表現の自由」についてのお話をお伺いしたいと思います。

えびはら先生、本日はよろしくお願いします

どうぞ、よろしくお願いします。

漫画の規制について

まいっちんぐマチコ先生の単行本

いきなりブッ込んだ質問になるのですが、漫画の世界では「女の子の乳首が描けなくなった」という分かりやすい規制の例があるかと思います。先生はどのようにお考えですか

まぁ、時代の流れだよね。それに逆らうわけにいかないので、しょうがないと思う。その範囲内でどこまで挑戦できるのかっていうのも漫画家としては面白いと思うんだけどね。

昔はテレビでも普通に乳首は出ていたんだけど、何かの事件でもあったのかなぁ? 悪影響を与えるってことで、そういう表現はダメな傾向になっていったよね。

例えば、先生の代表作である『まいっちんぐマチコ先生』の中にも、いわゆる「お色気シーン」が数多く登場するかと思います。連載当時は、何も言われなかったのでしょうか

僕の漫画に特別、お色気シーンが多かったわけじゃないと思うんだけど…

むしろ、少ない方でしたよ?(笑)

いや、多かったと思いますが(笑)ケン太くんがマチコ先生の衣類を剥ぎ取ったり、おっぱいを触るというシーンはもはやお約束になってましたし!

もっと他に、そういう表現が多い漫画なんていくらでもあったからね。乳首もたくさん出ていたいし。僕としては(お色気は)少ない方だと思っているんだよ。

僕の場合は、藤子先生の影響を強く受けているので、どうしても藤子先生の漫画と似たような話ばかりを描いてしまっていたんだよね。だからちょっぴり、「お色気もの」に挑戦してみようと思って。

藤子先生は絶対、こういうのをやらないからね。過剰なお色気とか、そういうのは嫌いな先生だった。

真剣に話すえびはら先生

そうなんですか? 意外ですね。ドラえもんでは、しずかちゃんの入浴シーンがわざとらしいぐらい登場してたと思うんですが…

あれはね、読者サービスなんだよ。読者アンケートでも、しずかちゃんのちょっとエッチなシーンが見たいと思う人が多かったからね。我々は読者が読みたいと思う漫画を描くのが仕事だから、求められているんだったら、描く。

でも、藤子先生は本当はお色気シーンとかは苦手だったりするんだよね。ちなみに、そういうシーンではしずかちゃんの顔は藤子先生が描いていたけど、顔から下は僕が描くことも多かったね(笑)

えびはら先生の画像

なるほど、藤子先生みたいな大御所でも、アンケートの内容を気にしていたとは。 …話を『まいっちんぐマチコ先生』に戻しますが、例えば学校のPTAなどからクレームが入ったりはしなかったんですか? 子供に悪影響がある、とか。

実はね、クレームも寄せられていたらしいんだけど、僕は一切知らないんだよね。編集部のところで全部、止まっていたらしい。編集の人が色々と考えてくれたみたいで、「クレームが来ているという話が僕の耳に入ったら、作品に影響が出てしまうかもしれない」と考えてくれたみたいでさ。

編集って、「漫画家に気持ちよく描かせる」というのも仕事なんだよね。だから、世にでる漫画の多くは「漫画家一人の作品じゃない」って僕は思う。みんなで作り上げるもの。

マチコ先生の場合は、あとになって、そういうの(クレーム)が来てるっぽいというのを噂で聞いたぐらいなんだよね。

語るえびはら先生

それは素敵なエピソードですね! クレームがそういう形で止まる時代だったんだ。今なんて、Twitterで直接、漫画家にクレームを入れる時代なのに

ハガキの時代からネットの時代になったよね。今は少数派の意見が本当に強い時代。漫画家同士で集まった時にも「やりづらくなったね」なんて話をすることもあるけど。でも、自由に表現できる場っていうのは残されている。

例えば、コミケってあるでしょ。夏と冬にやるコミックマーケットに、僕は作品を出したことがあるんだよね。

ええ!? コミケですか。えびはら先生がコミケで同人誌を描いていたなんて、知りませんでした

そりゃ、描きますよ。あんなに自由に、自分の好きに描ける場があるんだもん。

世の中の規制はどんどん厳しくなっているけど、表現できる場がないわけじゃない。いざとなったらコミケがあるんだからね。

ただ、夏は暑すぎるし冬は寒すぎるから、最近はコミケに行かなくなったけど(笑)

真剣なえびはら先生

漫画家としての責任、読者としての責任

クレームの件もそうですが、規制が厳しくなった以上、今後は世の中に作品を出すとき、漫画家は「社会に与える影響」なども考慮しないといけないのでしょうか?

読者がただ不快になるだけのような、いきすぎた表現は確かにダメだとは思うんですよ。それは漫画家としてコントロールする責任があるとは思います。

でも、漫画はあくまでバーチャルの世界ですからね。エロがあったり、グロがあったり、危険思想な表現があっても別に良いと思うんです。悪影響があるかもしれないとか言うけど「作品を通して与えられた情報を、その後の人生においてどのように活用するかは、情報を受け取った人次第」だと僕は思うし。

人を殺す話なんて世の中にいくらでもあると思うけど、読者がそれに影響されて人を殺したとしても、いちいち漫画家が責任を取らされたりはしないよね。

そうですよね。それは、読者側のリテラシーの問題だと思います。読者の責任ですよね。

例えば、マチコ先生を読んでクレームを入れる人って、おそらくは話の前後をちゃんと読んで理解してくれていないと思うんだよね。男子学生が女性の先生のおっぱいを触ったら、その表現だけを見て「子供に悪影響がある」と思い込み、クレームを入れてる。

実際、ケン太は確かにマチコ先生にエッチなことをするんだけど、その後には必ず大人による報復が待っているんだよね。先生に怒られたり、親に怒られたり。つまりは、話全体をちゃんと読めば、「これはやってはいけないこと」ということが子供にも伝わるようになっている。

ちなみに、本当はケン太って、エッチなことが目的でマチコ先生にちょっかいを出しているんじゃなくて、話をはぐらかすための手段としてやっているんだけどね。自分がやったイタズラがバレそうなときとか、バツが悪くなった時にやる。

作品全体をちゃんと通して見てくれて、内容を正しく理解してくれると嬉しいんだけどね。

えびはら先生が漫画について語る

おっしゃる通りかと思います。最後になりますが、えびはら先生にとって漫画とは何でしょうか

「息抜き」だよね。娯楽だし、エンターテイメントだし。それに尽きると思いますよ。漫画を読んでいる時ぐらい、ホッとした空間をつくって欲しいじゃない(笑)
とにかく楽しいことなんだから、楽しけりゃ良いんだよね。その楽しいことに規制なんて本当はいらないと思うんだけど。まぁ、世の中の流れにうまく合わせて、これからもチャレンジしていきたいね。漫画だけの話に関わらず。

とても参考になりました。本日はありがとうございました!

お茶目なえびはら先生

まとめ

カメラを向けるとノリノリでポージングをしてくれたり、最後まで気さくにインタビューに応じてくださったえびはら先生は

「人を楽しませたい」

という思いが、常に体から溢れているような方でした。

「読者は、作者がちゃんと伝えたいことの内容を正しく理解して欲しい」

そんな話をしてくださいましたが、これは情報の受け取り手としてはとても大切なことだと感じています。漫画でも、映画でも、テレビでも、ネットの動画でも、作品に対して誰でも気軽に意見が言いやすい時代になったのは良いことですが、その反面、簡単にクレームも入れられる時代です。世の中から作品を簡単に消せる時代、そう言い換えても良いでしょう。

しかし、そんな風潮が広まれば、「クレームが入らない作品」を作ることに重点がおかれ、自由な表現というのは今後、どんどん少なくなってしまうことでしょう。それは私たちにとってあまり良い影響が無いように思います。

今回、えびはら先生の話を聞いて、まさに今、情報の受け取り手に対する意識改革が求められているように感じました。

私たちがこれからも良い作品に巡り会うために、考えなければいけないことはなんでしょうか。

<取材/文 竹内紳也>
<写真 八木あゆみ>

まいっちんぐマチコ先生・えびはら武司先生の公式サイトはこちら
https://machiko-sensei.jp/

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